全柔連長期育成指針

長期育成指針とは?

長期育成指針(ちょうきいくせいししん)とは、全日本柔道連盟内で策定された戦略的グランドデザイン(理想上の大枠の合意|長期的に遂行する事業の設計)であり、柔道を始める幼少期からシニア期まで、各ライフステージにおいて国民の成長と発展を支援するための包括的な指針です。さらに、この指針は、柔道離れや競技人口の減少といった日本柔道が直面する課題に対応するために作成されました​​。
具体的には、柔道の技術的な向上だけでなく、心身の健康促進や社会性の育成も重視し、柔道を通じて一生涯にわたってスポーツ活動と健康的な生活を維持できるように設計されています。また、柔道を通じて得たスキルや価値観を社会に応用し、貢献することも目指しています​。

柔道界の課題

  1. 柔道人口の減少
    戦後から続く柔道人口の減少が大きな問題となっています。特に、1964年の東京オリンピック後から一貫して減少しており、このままでは柔道の普及と持続可能性が危ぶまれています。
  2. 大会の高度化・低年齢化と個人差や性差の軽視
    大会の高度化や低年齢化により、発育発達の差が十分に考慮されておらず、特に性差が軽視される場面が増えていることが課題です。
  3. 発育発達の遅速の影響が十分に考慮されない指導体制
    子どもたちの発育や発達には個人差があり、その違いを考慮した指導が必要ですが、現行の指導体制ではそれが十分に行われていないことが指摘されています。
  4. 連続性のある普及(発掘)・育成・強化体制と練習環境(道場)の全国的な整備不足
    幼少期からシニア期まで連続的に柔道を学び、成長できる体制や、練習環境の全国的な整備が不足していることが問題視されています。
  5. 柔道指導者等のアントラージュへの教育機会の欠如
    柔道指導者や選手をサポートするアントラージュ(周囲の支援者)に対する教育や研修の機会が不足しており、適切な支援が行われにくい状況です。
  6. 柔道を学ぶ意義の理解の欠如
    柔道が持つ深い意義や価値が十分に理解されておらず、その結果、柔道離れが進んでいることが課題です。

長期育成の方向性

  1. 柔道の多様な価値を享受する機会の確保とアスリートパスウェイの提案
    柔道の多様な価値を誰もが享受できるようにし、各アスリートが成長の道筋(パスウェイ)を明確に持つことを目指します。
  2. 多様な評価軸を用いた他者や自分自身との挑戦の支援
    勝敗だけでなく、多様な評価軸を用いて、他者や自分自身に対する挑戦を支援し、成長の機会を広げます。
  3. 個人差を考慮した安全で適切な柔道指導の推進
    年齢や発育、発達の個人差を十分に考慮した、安全で適切な指導方法を推進します。
  4. 柔道実践者が生涯にわたって円滑に活動を継続できる支援
    柔道を一生涯楽しみ、続けるための支援体制を整備し、円滑な活動の継続を目指します。
  5. 全ての世代への支援ができる柔道指導者等のアントラージュの拡充
    幼少期からシニア期まで、全ての世代に対応できる指導者やサポートチーム(アントラージュ)の拡充を図ります。
  6. 柔道を通した修心の到達目標・内容の明示と普及
    柔道の精神的な成長(修心)を目指し、その目標や内容を明確にし、広く普及させることを重視します。
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